私の関心…02

スロー・ライフという生き方

 昨年のムンバイ(インド)に引き続き世界社会フォーラムに行ってきた。今回で五回目となるが、再び発祥の地であるブラジルのポルト・アルグレで開かれた。会議そのものについての報告はまた別の機会にゆずりたい。ただ、いろんな意味での「政治」に翻奔された、難しいものとなってしまった。それに比べ、開催地であるポルト・アルグレの街と、広大な会場内にあった若い人達のためのテント村とその生活が、とても印象に残った。

 ポルト・アルグレは、観光地ではないので日本ではなじみがないかもしれないが、人口百万人を超える大都市で南部の中心である。ドイツやイタリアからの移民が多く、ブラジルでも豊かな地域といえる。丁度ヴァカンスの時期であったためか、その生活は穏やかでゆったりしたものであると感じた。ヨーロッパとコロニアルな町並み力混在するせいもあってか、GDPなどでは表すことのできない豊かさがあるように思えた。

 方々から集まった主に若い人達のための会場内のテント村にも、同様の観を抱いた。そこはユース・カルチャーが支配的で、ミニマルでシンプルなライフスタイルの中に、穏やかでゆったりした感じを受けた。市中心部に仮設のステージが作られ、期間中連夜ライブがあり、それを地元テレビが生中継していたが、聴衆の多くは彼女/彼らであった。

 世界社会フォーラムは社会問題を討議するだけの場ではなく、文化をも視野に入れている。それはライフスタイルにもおよぶ。グローバル化がもたらす画一化に抗し、ファスト・フードではなく、スロー・フードという対抗的な試みがあるが、それはオルタナティブなライフスタイルの模索でもある。これをスロー・ライフへと広げていくことが、今度受けた印象から示唆されることであり、フォーラムの課題の一つであるといえるだろう。

 確かに。会場内でもゴミを集める貧民層の存在など、矛盾は無数にある。しかし、「もう一つの世界」への方途は、制度的な問題だけではない。スロー・ライフへの転換というようなライフスタイルの問題も重要なことである。世界社会フォーラムはそうしことを気づかせる場としても意義があるだろう。(現代政治、思想)

『日本科学者会議・個人会員ニュース』 No.62(2005年3月10日発行)より